皆さん、こんにちは! 今回は、Tealium製品を使う”ヒント”満載のインタビューをお届けします。お話しいただくのは、インターネットの黎明期から金融機関のIT化で活躍し、現在は、日本のメタバース発展にも携わる杉山拓也さん。
Tealiumスペシャルアドバイザーでもある杉山さんには、Tealiumの本質やCDPの未来について、わかりやすく解説していただきました。専門家の視点から見るデジタル世界の可能性、ぜひお見逃しなく!
Tealiumとの出会い
──杉山さんは、2016年からTealiumのCDPを使いこなしている、まさに日本における”ファーストユーザー”です。しかし、当時は、まだまだクラウドサービスが疑いの目で見られていた時期でした。どうしてTealiumを使おうと思ったんですか?
ずいぶん昔のことになってしまいましたが、Webサイトに訪れた顧客にどうしたら接客をできるのかを模索する中で見つけたのがTealiumでした。
個人的な感覚かもしれませんが、金融サービス業って、画一的なWebマーケティングがまったく通用しない世界なんですよ。“ライフプランニング“という言葉こそありますが、このご時世、10年後どころか、明日どうなるかだって分からない。そのためのカスタマージャーニーを描くのは非常に難しく、「家を買いたい」「車を買いたい」と、顧客がそう思ったその瞬間に、寄り添う形で最適なアクションしないといけません。
「顧客に寄り添うことが大事だ」とよく言いますよね。対面での接客なら、受け答えしていく中で、相手が本当は何を欲しているのか見極めて提案することができます。Webだとそれが難しい。月次でアクセス解析のレポートなんかを作っていましたが、これ意味があるのかな?って思っていました。「今月はXX人がサイトを訪れました」ではなくて、「今、この瞬間に、その人が見ているページは何か?それを担当者に今伝えて接客できないか?」ということを解決できるソリューションが欲しかったんです。
そんなとき、Tealiumの存在を知って、顧客の理解からタイムリーな接客までも一気通貫できることができるのではないかと直感したのです。銀行のWebサイトでリアルタイムCRMが実現できる!と思いました。
顧客が欲している情報は何で、
その情報をいつ必要としているのか?
──「タイムリーなアクション」の大事さに、早くから気づかれていたわけですね。導入後、その効果を実感した出来事はありますか?
Webから口座開設を申し込んでもらった後の、お礼の電話ですね。もともとは、キャッシュカードが自宅に届くタイミングを見計らって、リストをもらって電話をしていたんです。ところが、これがぜんぜん電話に出てもらえない!そこで、キャッシュカードが”届く前”に電話をかけるようにしたところ、電話が繋がって、そのうえ話を聞いてもらえる率が跳ね上がりました。
口座開設をしてからキャッシュカードが届くまでのアクセスをTealiumのCDPで調べたところ、「手数料は?」「金利は?」「解約したらどうなる?」「住所変更の方法は?」といったページをくまなく見ていることが判明しました。そしてカード到着後はアクセスがガクッと落ちていることもわかりました。実は、情報を欲しているタイミングは、”カードの到着前”だったんですね。顧客一人一人の思考が手に取るように分かった気がして、まさに目から鱗でしたね。
そして、顧客の“ほしい情報”もわかってくるようになりました。もし積立預金のページをよく見ていたのであれば、お礼の電話をかける時に、併せて積立預金の説明もする。こうしたアクションができるようになり、そしてそれがクロスセルにも繋がっていきました。
顧客の「瞬間」を逃すと、もう手遅れ
──これまで見えていなかった「お客様の思考」を察することができるようになったのですね。
ええ。それをさらに展開できたのは、カードローンの施策です。カードローンは「今すぐ使いたい」「誰にも知られずに使いたい」商品なので、申し込みはWebでしたいものです。でも「利用するのが怖いから、誰かに相談したい」という気持ちもある。
だから、そうしたアクセスには、こちらから「お困りですか?」と電話をかけてあげるようにしました。この時のコンタクト率や成約率は、既存のリストベースでのアウトバウンドコールとは明らかに違いました。
ちなみに、あんまりすぐに電話をかけたら怪しまれるかも?と思って、「Webサイトの離脱直後に電話をかける」「2時間後に電話をかける」「半日後に電話をかける」などとA/Bテストをしてみたのですが、いちばん効果的なのは、すぐ電話をかけることでした。半日経っていたらもう手遅れです。そのときにはもう別のこと考えていたり、別のサービスを契約済みだったりします。リアルタイムでの行動把握や理解、そしてそれに応じたタイムリーなアプローチの大事さを痛感しましたね。
「気持ちが高まっている瞬間」を見極めるソリューションとしてTealiumがあり、その瞬間に、商材の特性に応じて、電話やLINE、SMSでコンタクトをしていくことが大事だと思います。現在であればコミュニケーションチャネルが高度化、多様化していますので、施策を様々なパターンで実施できますよね。
メタバース空間でも必要となる顧客データ
──杉山さんは現在、日本におけるメタバース普及に尽力されていますが、メタバース・マーケティング戦略はどのように考えていくべきなのでしょうか?
今メタバースは、建築分野や医療分野といった産業用に展開が進んでいます。産業界が盛り上がれば次に公共分野、その後に個人へと浸透していくでしょう。個人的には2030年頃までには普及するのではないか、iPhoneの登場でスマートフォンの世界が一気に開けたように、デバイスの革新がメタバースの発展を引っ張っていくと考えています。
実は、私の十数年前の修士論文のテーマは、『オンラインバンキングにおけるアドバイザー接客の有効性について』というものでした。当時の最新技術を駆使して、f-MRIで脳波まで測って調べたところ、「インタラクティブなアドバイザー(アバター)がいるオンラインバンキングサイトの信頼性は、そうでない場合と比べると高かった」という結果が出ています。
メタバースのようなデジタル空間においては、アバター越しにコミュニケーションすることになります。アバターは高精度な生成AIで生成され、コミュニケーションの質もリアル空間に比べて情報量が格段に違うでしょうから、Tealiumのように相手の動向を察知・理解・アクションできるエンジンが実装されていくことでしょう。
Tealiumの本質とは?
──最後に、杉山さんが”Tealiumスペシャルアドバイザー”として最も伝えたいことを教えて下さい!
よくCDPの効果として、広告費の削減やコンバージョン率の最適化が挙げられていますが、Tealiumの本質はそこではないと思っています。
お客様がまさに自社製品を買おうとしているタイミングがリアルタイムで分かり、必要性を踏まえてタイムリーに担当者がコミュニケーションできること。ここで重要なのは、商品の成約数だけでなく、よりホリスティックに、「なぜその商品を申し込んだのか」「その商品によって何を得たいのか」といった購買行動の根底にある見えない情報が「チャネルを跨いだコミュニケーション」の結果として取得できること。ここにこそKPIを置くべきです。
すべての顧客接点で、「顧客に寄り添った接客」がちゃんとできる。心地よく、濃密なコミュニケーションができる。それに迫ることができる唯一と言ってもいいエンジンであるTealium CDPの「開発思想」をユーザー側も本質的に理解していけば、もっと未来に向けてのユースケースが広がると信じています。
──ありがとうございました。