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MCPによるAIとカスタマーデータプラットフォームの連携

AIフレームワークやAIデザインパターンの普及、そして多様な応用可能性の広がりにより、市場ではAIモデルとデータサービスをより洗練された方法で連携し、迅速に進化、再構築、維持するための手法が求められています。そこで登場するのが、モデル・コンテキスト・プロトコル(Model Context Protocol:MCP)です。Tealiumを基盤としてMCPを組み込むことで、どのようにAI連携を実現できるかをご紹介します。当社は、AIシステムとTealium EventStream(データ収集)およびAudienceStreamのMoments API(リアルタイムデータ取得)との間でデータをやり取りするMCPデモアプリを作成しました。構造化された APIの実装を通して、このシステムレシピは、AIモデルとのインタラクションにおいて、リアルタイムの訪問者プロファイルアクセスとイベントトラッキングを可能にします。

MCPは、顧客接点とAIシステム間の企業データの流れを根本的に再構築します。従来のCDP実装では、対話型AIや新たなチャネルが求めるリアルタイム性に対応するのが難しい場合があります。この標準化されたプロトコルは、ベンダーや実装の違いに関わらず、AIと顧客データシステムが双方向に通信できる共通言語を提供することで、こうした課題の一部をを解決します。言わば、企業の顧客データにおけるTCP/IPのような存在であり、システムの相互運用性を可能にする基盤的なプロトコルです。そして、対話型AI体験の実現に不可欠なのが、Tealiumのリアルタイムデータ処理能力です。AIがビジネス推進に必要となる重要な顧客データに基づいて推論できるようにするための、もう一つの重要な要素です。

このプロトコルには、以下のようないくつかの利点があります。

  • 標準化されたデータ形式により、すべての顧客接点で一貫性を確保
  • データ収集のためのTealiumのEventStreamとの統合を簡素化
  • AudienceStreamの統合された顧客プロファイルへのシームレスなアクセス
  • リアルタイムのデータ可用性により、即座にパーソナライゼーションが可能
  • 新たなデジタル体験の統合におけるエンジニアリング負荷の軽減

オムニチャネルデータオーケストレーションにおける戦略的意義

MCPの統合は、オムニチャネルのデータオーケストレーションプラットフォームを担うTealiumの戦略的ポジションをより一層強化するものです。AIとCDP間のインタラクションにMCPを活用することで、Tealiumは企業のテクノロジースタック全体で顧客向けAI実装の中枢神経として機能します。

AIエコシステムのための統一データ交換プロトコル

MCPデモアプリでは、Tealiumが以下のシステム間においてユニバーサルなデータコネクタとしてどのように機能するかを示しています。

  • 会話型AIプラットフォーム
  • カスタマーサービスシステム
  • マーケティングオートメーションプラットフォーム
  • eコマースプラットフォーム
  • モバイルアプリケーション
  • IoT デバイス

この相互運用性により、Tealiumは企業全体におけるAIコンテキストの提供基盤となり、統一されたデータ交換プロトコルを通して、あらゆるタッチポイントにおいて一貫したパーソナライゼーションを実現します。

技術アーキテクチャ

MCPデモアプリは、以下のスタックコンポーネントで構成されています。

  • フロントエンド: Next.js 14.1.0 (React 18および TypeScriptを使用)
  • 状態管理: 訪問者プロファイルデータの管理に React Context APIを使用
  • スタイリング: コンポーネントベースのデザインを採用した Tailwind CSSを使用
  • APIレイヤー: サーバーサイドのAPIルートを用いて、認証情報を安全に管理
  • 認証: JWT(JSON Web Token)を用いたトークン検証によるAPIセキュリティ対策

技術要件

  • サーバー環境: Node.js 16以上(npm/yarn対応)
  • クライアントサポート: ES6互換の最新ブラウザ
  • APIアクセス: APIアクセスが有効なTealiumアカウントと、適切なエンドポイントが有効になっていること。(他のTealium APIも利用可能です)
  • データソース: イベント取り込み用に適切に構成されたTealiumのデータソース
  • デモソースコード: https://github.com/Tealium/tealium-mcp-demo

MCPデモアプリは、3つの主要な技術コンポーネントから構成されたモジュール型アーキテクチャを採用しています。

  1. MCP実装レイヤー:TypeScriptベースのプロトコル実装で、AIモデルイベントにおけるJSONペイロードを以下のスキーマタイプで標準化します。
    • ModelConfig: プラットフォーム、モデル名、バージョン、パラメータ仕様
    • QueryData: 訪問者のコンテキスト参照を含むユーザークエリのエンコーディング
    • ResponseData: パフォーマンス指標とトークン使用状況を含むモデル応答
  2. 双方向API連携:
    • 訪問者プロファイルデータ取得(GET)用のTealium Moments APIを実装
    • イベント送信(POST)用のTealium EventStream APIをサポート
    • CORS問題を回避するための構成変更可能なエンドポイントプロキシ機能
    • APIの耐障害性を高める指数バックオフによる再試行ロジックを搭載
  3. 開発者向けツール:
    • リクエスト/レスポンス検査機能を備えたAPIテストコンソール
    • TypeScriptインターフェースによる構成の検証
    • 構造化JSON出力によるデバッグログ
    • フォールバック戦略を備えたエラー処理

技術仕様

MCPデモアプリは、以下の主要な技術的機能を実装しています。

1. 標準化されたMCPイベントスキーマ

MCPデモアプリは、コードスニペット1に示すように、標準化されたJSONスキーマを使用して、3つの主要なMCPイベントタイプを定義します。

コードスニペット1:MCPイベントタイプ

// Model Deployment Events
interface ModelDeploymentEvent {
  event_name: 'ai_model_deployment';
  model_platform: string;
  model_name: string;
  model_version: string;
  model_type: string;
  model_configuration: Record<string, any>;
  deployment_id: string;
  deployment_timestamp: string;
  deployment_status: string;
  deployment_environment: string;
}

// Model Query Events
interface ModelQueryEvent {
  event_name: 'ai_model_query';
  query_id: string;
  query_text: string;
  query_timestamp: string;
  user_id: string;
  visitor_id?: string;
  session_id: string;
  context?: Record<string, any>;
}

// Model Response Events
interface ModelResponseEvent {
  event_name: 'ai_model_response';
  query_id: string;
  response_text: string;
  response_timestamp: string;
  response_latency_ms?: number;
  tokens_used?: number;
  context_used?: Record<string, any>;
  error?: any;
  has_error: boolean;
}

2. 訪問者プロファイル取得システム

MCPデモアプリは、訪問者プロファイルを取得するための複数の手法を実装しています

  • 匿名訪問者ID検索:Tealiumの匿名IDを使用してプロファイルを取得します。
  • 電子メールアドレスに基づく検索:属性IDを使用して、電子メールアドレスと訪問者プロファイルをマッピングします。
  • カスタム属性検索:訪問者識別のための顧客定義属性に対応します。
  • コンテキストのエンリッチメント:訪問者プロファイルデータを使用して、AIコンテキストを自動的にエンリッチ化します。

3. 技術的実装の詳細

API認証:APIキー検証によるBearer(ベアラー)トークン認証を実装

  • リクエスト/レスポンスのログ記録:詳細なレベルで設定可能な構造化ログ記録。
  • エラー処理:型付きエラー応答による包括的なエラー処理。
  • パフォーマンス指標:APIリクエストのレイテンシを自動でトラッキング。
  • モックデータ対応:設定可能なモック応答を備えた開発者モード。
  • 環境設定:開発、テスト、本番など複数の環境設定をサポート。

クロスチャネルの戦略的利点

MCPは、企業が自社のデータインフラと急速に進化するAIエコシステムをつなぐ方法に戦略的な影響を与えます。企業が、チャットボットから音声アシスタント、モバイルアプリ、IoTデバイスまで、あらゆる顧客接点でAIを導入する際に、データの一貫性とコンテキスト共有における重大な課題に直面します。当社のMCPの実装により統合データ基盤が構築され、チャネルを問わずAIのインタラクションが同一の包括的な顧客コンテキストにアクセスできるようになります。これにより、顧客を失望させ、企業やブランドの信頼を損なうサイロ化されたAI体験を排除することができます。

MCPは、TealiumのCDPを企業のテクノロジー環境全体に接続するための革新的な機能を提供します。

1. エンタープライズAIガバナンスと一貫性

  • 統一された顧客のナレッジグラフ:すべてのAIインタラクションが同一の一貫したデータ基盤から情報を取得できるようにします。
  • クロスチャネルID解決:異なるタッチポイント間で顧客IDの一貫性を維持します。
  • 一元化されたAIインタラクション分析:すべてのチャネルにおけるAIインタラクションを包括的に可視化します。
  • ガバナンスとコンプライアンス管理:すべてのAI実装において一貫したデータ利用ポリシーを適用します。

2. オムニチャネル体験のオーケストレーション

  • シームレスなコンテキストの引き継ぎ:チャネルをまたいだ会話でもコンテキストを維持したまま移行できます。
  • 顧客理解の進化的深化:AIとの各インタラクションから得たインサイトをもとに、顧客プロファイルを継続的にエンリッチします。
  • 一貫したパーソナライゼーションルール:すべての顧客接点で統一されたパーソナライゼーション戦略を適用します。
  • チャネル毎に最適化:各チャネルの固有の能力に最適化された、カスタマイズされた体験を提供します。

3. 統合機能

アプリケーションは、開発者向けに複数の統合方法を提供します。

  1. コードスニペット 2 に示す通りSDK統合です。

コードスニペット2:SDK連携

import { 
  sendModelQueryMcp, 
  sendModelResponseMcp 
} from '@tealium/mcp-sdk';

// Track user query
const queryResult = await sendModelQueryMcp(
  {
    query: "What products are on sale?",
    visitor_id: "a-visitor-id-12345"
  },
  {
    model_name: "gpt-4",
    model_version: "1.0",
    platform: "openai"
  },
  {
    account: "my-tealium-account",
    profile: "my-profile",
    dataSourceKey: "abc123"
  }
);

// Track model response
await sendModelResponseMcp(
  {
    query_id: queryResult.query_id,
    response: "Several items are currently discounted..."
  },
  {
    model_name: "gpt-4",
    model_version: "1.0",
    platform: "openai"
  },
  {
    account: "my-tealium-account",
    profile: "my-profile",
    dataSourceKey: "abc123"
  }
);

2. ユニバーサルチャネルサポート(Web、モバイル、店舗、エージェント)

3. エンタープライズシステムコネクタ
(CRM、マーケティング、コマース)

適応性のあるAIデータのコンポーザビリティ(構成可能性)

Tealiumと連携したMCPは、進化し続けるエンタープライズAI環境に適応させやすく、必要に応じて多様な統合を追加したり、異なる実装を入れ替えたりすることが容易にできます。これにより、以下のようなAI活用のコンポーザビリティが促進されます。

  • 特定のAIベンダーに依存しない構成の実現
  • チャネルの多様化への将来的な対応
  • データのエンリッチメントとアクティベーションの促進
  • 競争優位性の確立
  • パートナーエコシステムの強化や拡張

MCPの統合は、エンタープライズ企業が直面している大きな課題、つまり「つまり、AIを活用したさまざまなチャネルが急速に広がる中で、顧客データを利用しやすく、一貫して活用できるようにする」という問題を解決します。MCPの導入によって、顧客データが顧客との接点すべてにシームレスに流れる未来を創出します。Tealiumの今後のMCPイノベーションにご期待ください。

カスタマージャーニーがますますデジタル化され、自己主導型になっていく中で、パーソナライズされた体験を大規模に提供する能力はが、これまで以上に重要になっています。TealiumとMCPデモアプリの組み合わせにより、企業は以下を実現するための強固な基盤を手に入れることができます。

  • あらゆる顧客接点におけるリアルタイムのパーソナライゼーション
  • 包括的な顧客データを活用し、AIによる体験の強化
  • 複雑なカスタマージャーニー全体にわたる一貫したエンゲージメントの実現
  • データに基づく洞察を活用し、顧客体験を継続的に向上

MCPは、顧客データの収集、統合、活用方法を標準化することで、企業の顧客体験を変革し、測定可能なビジネス成果の実現を支援します。

継続的な学習

この記事で取り上げたTealiumのコンポーネントに関する詳細については、Tealium AIStreamのページも是非ご覧ください。


BJ Allmon
Senior Technical Product Manager at Tealium. BJ builds and manages Tealium's Visitor and Identity Platform (VIP) product strategy and roadmap.

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