例えば、木曜日に、配送の遅延について不満を抱いている顧客が問い合わせを行うと、適切な回答が得られました。しかし、その顧客が土曜日に再び問い合わせを行うと、AIアシスタントはまた最初から同じ対応を繰り返します。前回の質問内容も、顧客がなぜ不満を抱いていたのかも記憶されておらず、ただ同じような定型的な自動応答が繰り返されるだけです。これが現在のエージェンティックAIの一般的な動作であり、顧客もそのことを実感しています。

これはモデルの問題ではありません。個々の回答は、どれも申し分のないものになり得ます。しかし、そのコンテキストを捉え、次回のやり取りで利用できるようにならない限り、そのやり取りで得られたものは何も引き継がれません。これが、一度きりのAI応答と顧客向けAIシステムの違いです。

TealiumとAnthropicは、連携してこのギャップを埋めます。Tealiumは、リアルタイムの顧客コンテキスト、ID、同意、およびアクティベーションレイヤーを提供します。Claudeは推論レイヤーを提供します。両者が連携することで、あらゆるやり取りの内容を次回のやり取りに反映することができる、クローズドループ型のアーキテクチャを構築できます。

AIによる応答からAIシステムへの移行

多くの組織が、アシスタント、サービス体験、デジタルコマースを強化するために、大規模言語モデルの活用を試みています。しかし、モデルを直接呼び出すだけでは、つながりのある顧客体験を提供するには不十分です。顧客向けのAIには、単なる推論以上の機能が必要です。リアルタイムのコンテキストへのアクセスと、その結果を顧客プロファイルに書き戻す仕組みが不可欠です。それこそが、クローズドループシステムを他と異なるものにしている特徴なのです。

クローズドループでは、次の処理が行われます。

  • モデルは意思決定を行う前に、現在の顧客コンテキストを受け取ります。
  • その意思決定の結果が、ファーストパーティデータとして取得されます。
  • 更新されたプロファイルは、下流システムでのアクションをトリガーできます。
  • 将来のやり取りは、より完全な記録に基づいて開始されます。

その結果、やり取りを重ねるごとに、より適切で有益なAI体験が実現します。

アーキテクチャの仕組み

データは、TealiumとAnthropicの間を双方向に移動します。そして、各ステップを積み重ねながらループを形成します。

アウトバウンド:リアルタイムの顧客コンテキストをClaudeに送信

アウトバウンドとは、Tealiumからモデルへデータが送信されることです。これには2つの方法があります。Claudeは、TealiumのマネージドMCPサーバーを通して、リアルタイムの顧客コンテキストを取得できます。これにより、モデルは推論時に、属性、オーディエンス、指標、アフィニティ、その他の関連シグナルといった、ライブのプロファイルデータにアクセスできます。また、Tealiumからデータをプッシュすることもできます。イベントが発生したり、顧客がオーディエンスに追加されたりすると、Tealiumは適切なコンテキストを組み立て、意思決定のためにそれをClaudeへ送信します。

いずれにしても、モデルは孤立した状態で推論するのではなく、顧客の現在の状態を踏まえて推論するようになります。適切な意思決定には、適切なコンテキストが不可欠です。サービス担当者は、顧客の状況と直近の行動履歴を把握している必要があります。ショッピングアシスタントは、顧客の嗜好、最近の行動、ロイヤルティシグナルを把握している必要があります。デジタル体験は、企業やブランドがすでに把握している顧客情報を反映したものでなければなりません。

インバウンド:Claudeの意思決定をファーストパーティデータとして戻す

インバウンドとは、Tealiumにデータが戻ってくることです。Claudeは、構造化された意思決定の結果を返します。それは、感情傾向、意図、製品レコメンデーション、次善のアクションなどです。結果は構造化されているため、Tealiumはそれを単一のアプリケーションフロー内に閉じ込めるのではなく、ファーストパーティデータとして顧客プロファイルに直接書き戻すことができます。

書き戻しループ:推論を記憶に変える

書き戻しとは、システムをその場限りの一過性の処理から、価値が積み上がっていくシステムへと進化させるステップです。Claudeの出力がプロファイルの一部として組み込まれると、それをセグメンテーション、パーソナライゼーション、配信抑制、オーケストレーションに活用できるようになります。そして次にClaudeが呼び出されたときには、より充実した最新の記録状態から処理を開始できます。

例:
Claudeが読み取る情報
{loyalty_tier: gold;
last_3_categories: running, recovery, active wear}

その後、Claudeは製品を推奨し、last_ai_recommendationとinferred_intent: {replacement_gear}をプロファイルに書き戻します。その結果、一般的な割引メールの配信が抑制されます。

外部向けの体験では、コンテキストの品質が、画一的に感じられる体験と、インテリジェントに感じられる体験との違いを決定づけます。クローズドループアーキテクチャにより、企業やブランドは単なる会話だけにとどまらず、より広範な顧客システムと連携したAI体験を提供できるようになります。

1. より適切なパーソナライゼーション

モデルがライブの顧客コンテキストにアクセスできれば、プロンプトに入力された内容だけでなく、その時点での顧客の状況を反映した応答や推奨事項を生成できます。

これにより、以下の品質を高めることができます。

  • おすすめ商品
  • ガイド付きショッピング体験
  • 顧客ロイヤルティに応じたメッセージ配信
  • パーソナライズされたコンテンツとオファー

2. より良いサービス体験

カスタマーサービスAIは、顧客がジャーニーのどの段階にいるのか、これまでに何が起きたのか、そしてどの結果を次のステップに反映すべきかを理解できると、より有用なものになります。Tealiumがこれらの成果を収集・蓄積することで、チャネルや時間をまたいだサービス対応の一貫性が向上します。

3. チャネルを横断したよりスマートなオーケストレーション

AIの価値は、AIが何を提示するかだけにあるのではありません。その価値は、企業がその成果を活用して何ができるかにあります。モデルの出力がプロファイルに書き戻されることで、企業やブランドはそれらのシグナルを活用して、ペイドメディア、CRM、サポート、デジタルチャネルにわたる下流の体験をトリガーできます。これにより、モデルの出力は単なる情報ではなく、業務で活用できるものになります。

活用例

ブランドコンシェルジュ

顧客は小売サイトのデジタルアシスタントを利用します。ClaudeはTealiumからロイヤルティステータス、嗜好、最近の行動履歴を取得してレコメンデーションを生成し、Tealiumはその結果を保存します。保存された結果は、将来のパーソナライゼーションやフォローアップ施策に活用できます。

サービスエージェント支援

サポート体験では、顧客プロファイルのコンテキストとジャーニーのシグナルを活用して、顧客の意図や次に取るべき最適なアクションを推測します。その結果はTealiumに書き戻され、将来のサービスフローや配信抑制ロジックの形成に役立てられます。

エージェンティックコマース

AIを搭載したコマースエージェントが、顧客による製品の比較検討や購入の完了までを支援します。そのやり取りの結果をプロファイルに書き戻すことで、将来の体験において、顧客が検討、選択、購入した内容が考慮されるようになります。

Tealiumの役割が重要な理由

顧客向けAIの長期的な価値は、モデルにアクセスできることだけから生まれるのではありません。モデルを取り巻くシステムから生まれるのです。Tealiumは、AIの出力をビジネス全体で永続的に活用できるようにするための以下の機能を提供します。

  • リアルタイムの顧客データ収集
  • ID解決
  • 同意を考慮したデータ処理
  • プロファイルのエンリッチメント
  • オーディエンスロジック
  • 下流システムでのアクティベーション

この基盤は、企業やブランドが単発的なAIの実験にとどまらず、ガバナンスが効いた、相互に連携した、顧客向けAIシステムへと移行するのを支援します。

より重要となるポイント

モデルの処理速度が向上し、コストが低下するにつれて、推論そのものは差別化要因ではなくなります。あらゆる企業やブランドも、高性能なモデルを呼び出せるようになります。競合他社が真似することができないもの、それが「顧客の記憶」です。つまり、モデルに提供するリアルタイムのコンテキストと、あらゆるやり取りを通じて蓄積される成果のことです。これこそが、TealiumとAnthropicの間に構築されるクローズドループです。

コンテキストによって回答が明確に変わる活用シーンを1つ選びます。その活用シーンのループを閉じます。冒頭の例で言えば、そうすることで、土曜日に再訪した顧客は、木曜日のやり取りを記憶しているシステムと対話することができるようになります。

自社のテクノロジースタックと連携し、リアルタイムデータを活用できるCDPをお探しですか?

お気軽にご相談ください。Tealiumが貴社のROI向上にどのように役立つかをご紹介させていただきます。

デモを依頼