パーソナライゼーション戦略は、時間とともに進化・拡大し、その価値も高まっています。2019年にMcKinseyが実施したシニアマーケティングリーダーへの調査(外部サイト・英語)では、自社のビジネスがパーソナライゼーション戦略で正しい方向に向かっていると考えているCMOは、わずか15%でした。同じ調査で、正しいパーソナライゼーション戦略を行っている担当者 (例えば、パーソナライゼーションリーダー) は、売上が5%~15%増加し、マーケティング費用効率が10%~30%向上していることもわかりました。
2021年になっても、依然としてパーソナライゼーションについて議論されていますが、この理由はパーソナライゼーションの可能性を最大限に引き出している企業が非常に少ないからです。「パーソナライゼーション」という言葉は、業界のあらゆる分野で広く使われるようになりましたが、共通の目標と定義を決めてからそれに伴う戦略を立てるのが賢い方法です。
今年5月に開催したTealium Digital Virtualocity 2021では、パーソナライゼーションの可能性を最大限に実現するためのプレイブックを今後段階的に構築していくという話をしました。イベントの中で、Humana社のビジネスインテリジェンスリード Erik Snyder氏は、パーソナライゼーションのプレイブックをどのように構築したかについて詳しく語りました。
Snyder氏が語った重要な点とは、「プレイブックを構築する前に、チームはそもそも何故この取り組みを行うのかを理解する必要がある」ということでした。彼のチームは、まさに何故この取り組みを行うのかを理解することからはじめました。チームメンバーはパーソナライゼーション戦略を、取引やクロスセル、アップセルだけに重点を置いたものにしたくありませんでした。また、適切な製品を適切なタイミングで適切な場所に提供することだけを考えてもいけないと考えたのです。医療業界のリーダーであるHumana社にとってパーソナライゼーションとは、データを活用して「消費者が必要なものを、欲しい方法で、欲しい時に、簡単に見つけて消費できるようにする」ことだと定義しています。
Humana社はその定義をもとに、BHAG(Big Hairy Audacious Goal)と名付けた目標を設定しました。最終目標は、データを使って、Humana社の消費者とのタッチポイント(個客接点)を100%パーソナライズすることでした。これを大規模かつ効果的に行うには、最終的な目標に到達するために適切なセグメンテーションを構築する必要があり、それを構築するためには適切なデータが必要です。これにより、次の段階である「顧客インサイトの取得」へ進むことができます。
パーソナライゼーションの成功は、データのセグメンテーションから始まる
大規模で優れたパーソナライゼーションは、優れた顧客データとセグメンテーション戦略に基づいて構築されます。しかし、データ主導のパーソナライゼーションを実行するにはどうすればよいのかわからない方もいるでしょう。理想的にはすべての顧客と1対1で話をすることですが、顧客体験の多くがデジタルチャネルに移行している現在では、このアプローチでは不可能です。そこで、データを通じて顧客を理解することが次善の策です。多くの企業が顧客データの重要性を認識していますが、関連するすべてのデータにアクセスし、それをまとめリアルアイムでアクションを実行する最善の方法に苦慮しています。そこで活躍するのがカスタマーデータプラットフォーム(CDP)です。CDPは、以下のような方法でパーソナライゼーションへの取り組みに役立ちます。
- AWSデータレイクを含む、すべての顧客タッチポイントから顧客データを集める
- バラバラのデータポイントを、一元化された顧客プロファイルに変換する
- 顧客エンゲージメントおよび分析のチャネルを通じて、コンテキストリッチなデータを有効化する
カスタマージャーニー全体でパーソナライゼーションの実行を向上させるためには、データとセグメンテーション戦略を正しく理解する必要があります。そこで、データのサイロ化を解消するための集中型CDPの構築が不可欠となります。
Digital Virtualicityの期間中、Snyder氏はこの集中化されたハブの重要性について素晴らしい洞察を紹介してくれました。Tealiumは、Humana社のパーソナライゼーションの取り組みを強化するために、データとセグメンテーションの取り組み拡大を支援しました。具体的には以下のとおりです。
- データレイヤーの配置: 現在異なる別々のシステムでサイロ化しているデータをつなぎ合わせる
- オーディエンスセグメントの開発: 不明な訪問者をより適切に識別し、セグメンテーションに使用できる訪問者の「プロファイル」を構築する
- インサイト用のセグメント分析: デバイスやプラットフォームにまたがるユーザーの行動を総合的に把握する
- オーディエンスセグメントの活用: 他のツールやシステムにリアルタイムでデータを配信し、データを利用した各種アクション実行までの時間を短縮
適切なデータ入手して戦略を立てる
もちろん、よりパーソナライズされた体験を提供するには、顧客を知り、顧客にとって何が重要なのかを正確に理解しなければなりません。しかし、これらの知見や情報を利用してパーソナライゼーション戦略を改善するにはどうすればよいでしょうか? Digital Virtualicity では、Humana社がその新たな理解を利用するための方法を説明しました。
- 全体に影響を与えることなく、セグメントのニーズに対応できるように体験をパーソナライズする
- 全体的な体験を向上するために、セグメントのニーズに合わせて機能を拡張または構築する
- セグメントが価値を見出すべき体験に注意を引くためのアウトリーチを提案する
- 最も重要なセグメントのいずれに対しても価値を生み出す可能性が低い業務を中止する
これらの戦略はすべて、「パーソナライゼーションの4R」として知られるRecognize(認識)、Remember(記憶)、Recommend(推奨)、Relevant(関連性)必要性から始まります。
Humana社によるパーソナライゼーションの成功
パーソナライゼーションは最終目標ではなく、進化するものです。Humana社は、パーソナライゼーションのプレイブックを作成する中でその計画を実行に移し、医療保険の登録プロセスにおいて特に登録が集中する時期に、消費者の登録プロセスを後押しするパーソナライゼーションの取り組みを検証しました。
チームは、医療保険のプランをデジタルで選択する高齢者にとって、個人情報のセキュリティおよびプライバシー管理が徹底されていることが、サービスに登録するかどうかの重要な判断要素であることを知っていました。Humana社は、パーソナライゼーションのプレイブック作成の初期段階で高齢者に対する施策を実行し、パーソナライゼーションのユースケースを定義づけました。
既存のオーディエンスセグメントを使用したA/Bテストを通じて、Humana社は、個人情報を保護する方法について有益な情報を提供しただけで登録数は20%増加しました。最終目標ではありませんが、称賛に値するステップです。
まとめ
最初のパーソナライゼーションの成功後も、どのようにこの取り組みの推進を維持したかについては、Snyder氏のプレゼンテーションビデオ(英語)でご確認ください。また、セッションの最後ではパーソナライゼーション啓発への8つのステップを紹介していますので、是非注目してご覧ください。