最良のCXを実現するデジタルマーケティングとは

 

Tealium Japan主催のカンファレンスイベント「Tealium Digital Velocity Tokyo 2021」が2021年6月10日にオンラインで開催されました。“Customer Experience from good to Great! – Tealiumと実現する最良のCX(顧客体験)”をテーマとした本イベントでは、デジタル変革をリードするユーザー企業や戦略パートナーが登場し、最先端の活用事例や最新のベストプラクティスを紹介しました。イベントの内容を振り返ります。

 

現在の顧客が求めるものは、より大きな変革

2021年のテーマはCXです。現在の顧客が求めるものは、より大きな変革となりました。その対応で、前例がないからできない、間違いを犯したくないからできないといった言い訳はもはや通用しません。

変革の最適解を見つけるためには、スピーディーに大量のトライを続ける必要があり、数多くのアイデアを準備しておく必要があります。Tealium Japan株式会社 カントリーマネージャーの公家尊裕は「キーノートと、国内各社の先進的な事例を通して、CXとカンパニートランスフォーメーションの実践を学んで欲しい」と語り、開会を宣言しました。

世界的なパンデミックによって、バーチャルへの移行が加速

キーノートに登場したGabrielle Hase(ガブリエル・ヘイズ)氏は、イギリスの小売およびeコマースのコンサルティング会社Soleberry Advisoryの創業者兼CEOです。これまで、有数の小売業のオンラインビジネスの立ち上げと成長を支援してきました。

2020年に発生した世界的なパンデミックは、産業に変化をもたらし、バーチャルへの移行を加速させました。人々の働き方も変わり、在宅・テレワークが一般的になりました。そのため、マーケティングにおいても変化が求められています。

現在の消費者動向を見てみましょう。マッキンゼーによると、アメリカの顧客の75%が新たな買い物行動を試み、36%が新しいブランドを試し、そのうちの73%がそのブランドに留まっているとしています。オンラインでの購入も従来比で35%増と、オンラインシフトが加速しています。

そこで新たに必要になるのは顧客の生涯価値への投資です。現在の消費者は感情レベルで企業とつながりたいと考え、機械的な音声メッセージによる対応では満足していません。「消費者は価格や製品に基づいて忠誠心を持つわけではなく、消費者体験、顧客体験に基づいて忠誠心を持つのです」とGabrielle氏は語ります。

顧客との交流は新しい関係を築くカギであり、デジタルこそがそれを提供する手段です。ファッションブランドのFall Riskは、オンラインサイトで商品を表示しながらも、購入受付には電話を使い、顧客とのコミュニケーションを親密化しています。食品メーカーのHungryroot社は、顧客に対して最初に実施するアンケートで志向をつかみ、パーソナライズした食料品プランを提供しています。

デジタル顧客の85%が、複数のデバイスや手段を使用

続いてGabrielle氏は顧客とのタッチポイントについて話を進めました。ユーザージャーニーでは無数のタッチポイントがあります。Googleの調査では、平均して6~8のタッチポイントを経て購入に至るといい、キャンディーバーを買うだけでも20個、フライトの予約では500個ものタッチポイントがあるとしています。

また、デジタル顧客の85%は、複数のデバイスや手段を使って購入しています。1つのチャネルだけでなく、オムニチャネルが日常であるということです。4つ以上のチャネルを通じて購入した消費者は、1つのチャネルで購入した消費者より平均で9%多く支出しているという報告もあります。さらに複数のタッチポイントを利用した顧客は、1つのタッチポイントを利用した顧客よりも23%多く買い物を繰り返したというデータあります。このように複数の方法でエンゲージメントする人には、より多くの価値があるのです。

それでは、企業はタッチポイントで何をしているのでしょうか。ビューティブランドHabitでは日焼け止めスプレーを買った顧客に対して、21日間連続で毎日リマインダーメールを送っています。それは毎日の習慣として日焼け止めを意識させるためであり、21日はそれに必要な日数だからです。顧客の行動データを活用してインサイトを作成している同社は、同業より85%以上実績で上回っています。

顧客を知ることが、よりよいパートナーになるための第一歩

このような効果を上げるためにはデータをどのように活用すればよいのでしょうか。Gabrielle氏は「本当にいいデータを収集することです」と語ります。イギリスのパーソナルグッズブランドのCEOは、顧客調査をこれまでの年1回から年7回に増やし、そこで毎回500もの新たな“気づき”を得たといいます。その1つが多くの新規顧客がサイトを訪れ、情報収集をしていたことでした。顧客は同じではなく、常に入れ替わっているということです。その行動を理解することで顧客にとってよりよいパートナーになることができ、結果として高い収益をもたらすことにつなげました。

Gabrielle氏は「今できることは、データを多くのタッチポイントから収集し、すべてのピースがはまる方法を探索し、正しい質問を通して顧客を知ることです。そして、タッチポイントをバランスよく配置して、コミュニティを作り上げることです」と語って講演を締めくくりました。

 

【国内事例】ソニーマーケティング
グローバルカスタマーマーケティングに向け、タグ管理ツールをTealiumで標準化

ソニーマーケティング株式会社 カスタマーマーケティング部門 グローバルウェブ部プラットホームマネジメント課 デジタルマーケティングストラテジストの福本龍之介氏は、グローバルにおけるタグマネジメントの標準化について紹介しました。

ソニー製品のマーケティングを担当する同社は日本ではTealiumを用いてタグマネジメントを実施していましたが、海外は個別のツールを採用していました。「グローバルでカスタマーマーケティングを展開していくためには、海外のリージョンと連携することが不可欠と考え、日本で実績のあったTealiumに統一しました」と福本氏は語ります。

グローバル展開のためには、データとオペレーションの標準化が不可欠であることから、タギング専門のグローバルオペレーションチームを設置してWebサイトにおけるタギング業務全般を担当しています。Webサイトにおけるタグ管理はTealium IQに集約し、グローバル横断タグと販売会社の独自タグを一括管理。合わせて各Webサイトのデータ構成も統一しました。福本氏は「今後はWebタグマネジメントの領域を超え、Tealiumの活用で得られた知見をグローバルに展開していきます」と展望を述べました。


グローバルにおけるタグマネジメントの標準化

 

【国内事例】博報堂
Cookie-less時代に求められるCMPツールとは

株式会社博報堂 マーケティングシステムコンサルティング局 局長の山之口援氏とマーケティングテクノロジー推進部 部長の金子明彦氏がマーケティングをDXするための成功パターンと体制について講演しました。

同社は、顧客接点ごとにサイロ化していたマーケティング活動を、顧客データをもとに統合し、多様な顧客接点を連携しながらマーケティング施策を実施するためにTealiumを採用しました。さらに、DX支援専門チームを設置して、戦略立案・施策の実行、運用・システム導入までをワンストップで支援する体制、マーケティング戦略を具現化するためのDXを実現するカスタマーファースト視点、業務プロセスとITの両面から検討するクイックスタートの3つに取り組んでいます。山之口氏は「テクノロジーとクリエイティビティで、均質化しない、そして限界がこないDXを目指していきます」と語ります。

一方で、DX実現に向けて新たな課題となっているのがCookieや端末IDの利用における法規制とブラウザやOSによる独自規制です。それにより、ターゲティング広告や効果計測に影響が出ることが予想されます。金子氏は「Cookie-less時代に向けて検討すべきはデータ(Cookie/ID)の活用を意識したエコシステム構築です。理想的なコミュニケーション像をシステムに落とし込みながら整理していくことが重要です」と語ります。


Tealium活用によりCTRを60倍にしたユースケース

 

【国内事例】アマゾン ウェブサービス ジャパン(AWS)
CXを実現するCustomer 360 データプラットフォーム

アマゾン ウェブサービス ジャパン株式会社 シニア事業開発マネージャーの甲谷優氏が、TealiumとAWSによるCXの実現について講演しました。イベントデータの爆発的増加や分析ツールの多様化により、従来型のモノリシックな分析基盤に限界が迫りつつあります。分析ニーズが高度化すると新しいワークロードを増やしたいといった要望が次々と出て来ますが、既存環境では対応できません。「そこでAWSではAWSレイクハウスアーキテクチャによってそれらの課題を解決します。Amazon S3によるデータレイクを中心に相互に連携する分析エンジンを、目的に応じて適材適所で選ぶことが可能です」と甲谷氏は語ります。

CXの実現にあたり解決すべき課題は、データの一元化、信頼性と品質の確保、コンプライアンスやガバナンス対応、セキュリティの確保など多岐にわたります。顧客ビューが断片化すると正しい意思決定もできません。「AWSでは顧客の360°ビューを実現するために必要な機能を網羅しています。顧客プロファイルやID解決の基盤はAWS、よりリッチなプロファイルや文脈を踏まえた意思決定などはTealiumを用いたCX基盤を構築することが可能です」と話しています。


顧客の360°ビューを実現するデータプラットフォームの成熟度曲線

 

当日は、上記事例に加えて、もう3社の企業からも事例紹介が行われました。

2021年のTealium Digital Velocityでは、企業を取り巻く環境が大きく変化している中、個人情報保護法、Cookieの規制など新たな課題も明らかになりました。最後に、当社の籾山から「Tealiumでは、グローバルでの実績を活かしながら、今後も皆様を積極的にサポートさせていただきます」という締めの言葉で、2021年のイベントは幕を閉じました。

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Shinsuke Umezawa

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