旅行業界において、パーソナライゼーションは「一度きりの予約になるか」もしくは「生涯にわたるロイヤルカスタマー」になるかの分かれ目となります。しかし、イベリア航空のようなグローバル航空会社にとって、そのようなきめ細やかな対応を実現することは極めて困難です。なぜなら、データはフライト予約の取引情報、ウェブサイトの行動履歴、CRMのプロファイル、アプリの利用状況など、さまざまなシステムに分散して存在しているからです。
顧客が本当に求めているものを、まさにそれを必要としている瞬間に把握するために、これらすべての情報をどのように結びつけるべきでしょうか?
これは、マドリードで開催されたユーザーグループディスカッションの中心的テーマでした。イベリア航空のカルロス・フェルナンデス(Carlos Fernández)氏とブランカ・ガルシア(Blanca Garcia)氏が登壇し、同社のデジタルトランスフォーメーション(DX)の道のりについて詳しく語っていただきました。イベリア航空は、Tealiumのカスタマーデータオーケストレーションプラットフォーム(CDP)を戦略の中核に据えることで、単に航空券を販売するだけでなく、顧客価値と戦略的な収益拡大を実現する、予測可能な仕組みを構築しています。
同社がどのようにそれを実現したのか、その取り組みをご紹介します。
データサイロとの決別:一元化された顧客の360度ビューの実現に向けたイベリア航空の戦略
多くの大企業と同様、イベリア航空の各部門もかつては特定のチャネルに特化した垂直型の組織でした。パフォーマンスマーケティングチームは売上向上に注力し、ロイヤルティチームは顧客維持に注力していました。データはサイロ化しており、それに伴い顧客体験も分断されていたのです。
2023年初頭に設定された最初の目標は、すべてのデータソースを統合し、クッキーレスの未来に備えることでした。しかし、より大きな戦略的目標は、これらの組織的・データ的なサイロを解消することにありました。

その解決策として、マーケティング、CRM、UX、分析、eコマースの専門家を集めた部門横断型なコラボレーションハブが設立されました。この新しい組織体制により、全員が単一の信頼できる情報源を基盤にして、データを活用して顧客に最高のサービスを提供するという共通の目標に向かって取り組めるようになりました。
最初の大きな課題は技術的なものでした。イベリア航空は、CRMからの予約IDなどのオフラインの取引データと、ウェブサイトからの訪問者IDなどのオンラインの行動データを統合する必要がありました。これは、重複するプロファイルを排除し、真の顧客の360度ビューを構築するために不可欠でした。
ユースケース:明確かつ定量化可能なビジネス成果
統一されたデータ基盤を構築したことで、イベリア航空の各部門は以下のような成果を達成しました。
→ CDPによって実現した、段階的なオーディエンスリターゲティングの取り組み
イベリア航空はゼロから始めたわけではなく、すでに予約放棄対策キャンペーンを実施していました。しかし問題は、データがサイロ化していたため、サイト離脱後のメッセージングに相乗効果が欠けていた点にありました。
Tealiumを活用してCRMデータとリアルタイムのウェブサイト行動履歴を統合することで、同社は隠れた大きな推進力を引き出しました。単にEメールを送るだけでなく、付帯サービスや航空券以外の製品に対する、高度にターゲティングされた自動リカバリーフローを構築したのです。
これらの点を結びつけた結果、以下の成果が得られました。
- 顧客識別力の向上により、ユーザーのリテンション率が57%向上
- この新しいインテリジェントなカスタマージャーニーが直接の要因となり、売上が12%増加
→ フルサイクルパーソナライゼーションによる付帯サービス収益の拡大
各部門は、単に航空券を売るだけの純粋な成果から、認知、維持、ロイヤルティを含む顧客のライフサイクル全体へと焦点を移しました。これは、予約時だけでなく、ジャーニー全体をパーソナライズするためにデータを活用することを意味します。現在、イベリア航空はマイクロセグメンテーションを用いて、顧客の興味や購買傾向を特定し、最適なタイミングで適切な付帯サービスを提案できるようになりました。これには、追加手荷物、機内サービス、または旅行関連のオファーなどが含まれます。
→ 豊富なCRMデータを効率的な有料メディアの利益に転換
イベリア航空は、画一的な広告を配信するのではなく、豊富なCRMデータや取引データに基づいて購買傾向モデルを構築しています。これらのモデルは、顧客がプレミアム運賃や特定の付帯サービスを購入する可能性を予測します。その結果得られたセグメントは、有料メディア、Eメールマーケティング、パーソナライゼーションチャネルで直接アクティベーションされ、すべてのチャネルにわたり、大幅に効率的かつ効果的なキャンペーンを展開できるようになりました。
→ デジタルと実店舗の融合
この戦略は画面の中だけに留まりません。イベリア航空は、データから得たインサイトを活用し、マドリードに開設したポップアップセンター、Espacio Iberia(エスパシオイベリア)のような、実店舗でのブランド体験を充実させています。同社は、単一のソリューションで実店舗での体験とデジタル上のプロファイルを結びつけることで、デジタルと現実世界がシームレスにつながったエコシステムを創り出しています。

顧客体験の新たな基準
イベリア航空の取り組みは、CDPの真の能力が単なるデータ収集にとどまらないことを証明しています。それは、大規模な組織において各部門が連携して働く方法を根本から変革することにあります。中核となるデータハブを中心に据えた部門横断的な組織を構築することで、同社は単なる目先のパフォーマンス向上にとどまらず、顧客ライフサイクル全体にわたって測定可能な真の価値を創出することに成功したのです。
もし、これを貴社の顧客体験の新たな基準にしたいとお考えでしたら、ぜひ弊社までお気軽にご連絡ください。