オーストラリアとニュージーランドの小売業は、世界的に比較しても、より個人に寄り添ったマーケティングを展開

新型コロナウイルスにおけるパンデミックを原因とするここ1年の騒動は、人々がビジネスを成り立たせる“消費者”ではなく個人であるという事実を小売業者に痛感させました。小売業者が事前に想定できる顧客の消費行動のパターンは一夜にして枯渇する可能性があり、実際に多くの場合が枯渇しました。デジタル化を準備していた小売業者のなかには生き残り、さらには発展したケースもありましたが、一方でデジタル化を準備していたにもかかわらず、事業が縮小してしまった小売業者もいます。

小売業における「デジタル化」とは何でしょうか?単にオンライン販売へ移行するような簡単な事でないことは、多くの小売業者が理解しているでしょう。従来の小売業者は、人々のニーズや期待の明確化に奮闘する一方で、物流に関してはあまり重きを置いていませんでした。しかし、小売業者にとっては物流の利便性をより高めることこそが重要だったのです。多くの場合、物流に重きを置いて施策を考えることで、事業運営や組織のあり方が大幅に考え直されるようになりました。

スーパーマーケットはその良い例です。パンデミック以前は、デジタルトランスフォーメーションは全般的に抽象的な目標でしたが、早急に取り組まなくてはならないものになりました。デジタルトランスフォーメーションへの迅速な取り組みの結果は、新型コロナへの対策も進み、都市生活に日常の感覚が戻ってきた一方で、オンラインショッピングの利便性やパーソナライズされたシステムに対する期待は今後も続く可能性が高いでしょう。これは、個人の特性や好みを認識した、より効率的で直観的なサービスの始まりを示すものです。

スーパーマーケット以外の小売業では、環境の性質が逆転しています。デジタルおよびモバイルは小売業の玄関口として機能し、実店舗はショールームや配送センターとしても機能するようになっています。パンデミックの短期的な影響としては、販売方法に大きな柔軟性が求められる一方で、ショッピング時の人との接触を避けることが必要でした。しかし、物理的な接触が減少しても、買い物客は買い物に人間味を感じて、個人として認識されたいと感じます。顧客の嗜好の理解に関しては、以前にも増してこの2点を重視したサービスを提供しなければならなくなるでしょう。

このようにデジタルと店舗のサービスの境目が曖昧になってきているため、オムニチャネルの考え方が不可欠になります。人々はオンラインと同じレベルのパーソナライゼーションを店舗でも期待します。あらゆる効果的な戦略の中心となるのは、すべてのソースからのデータを統合して、顧客の単一で包括的なビューを提供することです。実際、デジタル体験は店舗内体験の向上に役立ちます。ユニクロはこの施策を採用しています。同社はデジタルプラットフォームと実店舗を組み合わせることで、顧客が精算時の行列で不快に感じる状況を解消しました。小売業者は、両方のプラットフォームを組み合わせて活用することで最適な商品を提供する力を持ち、最適な顧客体験を提供できます。

オンラインで提供する消費者個人への情報提供(商品の提案やサービスの提供)の基盤として、買い物客の履歴データを利用することで、小売業者は顧客エンゲージメントを4倍にし、売上を2倍以上にすることができました。このデータ利用をより良い体験に変換するためには、システムへの投資が必要です。この投資による効果は、1回限りの購入だけでなく継続的な購入の可能性を生み出すメリットがあります。人々は自分を大切にしてくれる企業やブランドを覚えているものです。

現代では特定の小売企業やブランドに対するロイヤルティは弱まっているかもしれませんが、一元化されたデータの活用により可能になったパーソナライゼーションサービスの出現は、ロイヤルティを取り戻すチャンスを提供します。このような変化が、特にここ1年間のような急劇なペースで起こると、消費者は不安になります。しかし、適切な事業姿勢とツールがあれば、あらゆる形態と規模の小売業者は未来へ前向きに立ち向かえます。

このテーマが貴社のビジネスにどのように応用できるのか、さらに詳しく知りたい方は、オーストラリアとニュージーランドでのパーソナライゼーションと小売業の未来に関するレポート(英語)を是非ご覧ください。

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Shinsuke Umezawa

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