顧客事例

顧客事例:日本電気株式会社

アノニマスユーザーとIDのリアルタイムな紐付けでABMの効果を高め、商談化率8割以上を目指す

モバイルユーザーの行動把握、新規見込み顧客の獲得、リアルタイムのアクションを課題としていた日本電気株式会社(NEC)は、既存のMA(マーケティングオートメーション)ツールによるメールマーケティングだけでは限界を感じていた。そこで、これまで蓄積したデータや既存ツールを活用する形でTealium Customer Data Hubを導入。モバイルユーザーやアノニマスの行動を可視化し、広告のROI向上や商談までの効率化を実現している。

課題

  • 新たな社会ソリューション事業の市場への訴求と新規顧客獲得
  • オウンドメディア「wisdom」のリピート率向上
  • モバイルユーザーへの対応と行動把握

ソリューション

  • Tealium Universal Data Hubをコーポレートサイトとwisdomに導入
  • Customer Data Hubを既存MAツールやCRMおよびDMPなどと連携し、リアルタイムなアクション
  • Customer Data Hubで、アノニマス状態の会員の行動とログイン後の会員情報を紐付けた、新規リードのフォロー

効果

  • 登録ユーザーデータから分断されていた、モバイルユーザーやアノニマスの行動や興味を把握することで、効果的な広告施策を実施
  • アノニマスの状態からナーチャリングでき、短いリードタイムでアプローチが可能
  • 商談の可能性が高い顧客に絞った営業が可能となり、商談化率が大幅に向上

新たな顧客にアプローチできるデジタルマーケティング基盤を模索

NECは、2014年から社会価値創造型企業への変革を打ち出しており、インドの国民ID制度で生体認証技術を提供するなど、社会ソリューション事業に力を入れている。IMC本部では、社会ソリューション事業の価値を適切な顧客に届けるミッションを持っており、「これまでターゲットにしてきた顧客以外にもアプローチしていくことが必要となってきました」とNEC IMC本部 本部長代理 東海林 直子氏は話す。

「これまでの情報システム部門のお客様だけでなく、機会が限定されていたユーザー部門のお客様とも接触していく必要がありますが、十数年前から取り組んできた顧客データベースを使ったメールマーケティングだけでは、新たなお客様と接触することは困難でした。社会ソリューション事業をマーケットに認知してもらうことはもちろん、新たなお客様とつながるためにも、デジタル基盤の再整備に取り組む必要がありました」

オウンドメディア「wisdom」も充実させる必要があり、2016年にwisdomをリニューアルする。「営業だけではコンタクトしにくいお客様に情報を届けるために立ち上げたwisdomは、ビジネスパーソン向けに教養やITに限らないトレンド、コラムなどのコンテンツを提供していました。リニューアルでは、メインターゲットを経営やITに影響を与えるリーダーに設定し、ICTで社会課題に取り組むユースケースをコンテンツの中心としました。これにより、wisdomを中心に新たなユーザーを獲得していくことを目指しました」と東海林氏は説明する。

また、モバイルユーザーの存在も見逃すことはできない。NECでは、これまでにも公式アプリでモバイルユーザーに情報を発信していたものの、PCと比べてモバイルユーザーが何に興味を持っているかといった行動を可視化し、理解することが大きな課題のひとつだった。既存のマーケティングツールでは、どの企業でどのような役割の人なのかなどの結果を分析することはできても、結果からアクションにつなげることに手間がかかったと東海林氏は語る。「これまでは、データベースから必要なデータを精査するのに手間がかかっていました。2015年に導入したMAは、メールマーケティングなどをリアルタイムに行うことができますが、広告施策にデータを活用しようとすると半月かかる場合もありました。データが扱いやすく、データをもとにリアルタイムにアクションを取れるプラットフォームが不可欠だと考えていました」

自社イベントに向けてさまざまな施策を実行

デジタルマーケティング基盤の再整備のためにさまざまな情報を収集していたNECでは、活発な動きをするアノニマスの存在を把握していた。このアノニマスを顕在化させて効果的なアプローチができるのではないかと考え、Tealium Customer Data Hubを導入した。「既存の異なるベンダーのツールを紐づける役割として使えることが大きなポイントです。他のツールのハブとなって、サイロ化した既存データなどを活用してさまざまなアクションにつなげることが魅力でした。アノニマスの行動履歴を把握し会員登録後にアノニマス時の行動とスティッチングできたり、デバイスをまたいだ訪問にも対応できたりするなど、目的に合ったものだと感じました」と東海林氏は選定の理由を話す。

「自社イベントに向けデータを可視化、いくつか試験的に行った広告キャンペーンでは、一定の成果を出すことができました」と話す東海林氏は、Customer Data HubのAudienceStreamのバッジ機能で、アノニマスの状態から興味・関心に応じてバッジを付与し、ある程度の数のバッジが付与されたサイト訪問者に対して、広告やメールなどの施策を行っていったと話す。「B2C企業と比較して、施策に回せるターゲットの母数が限定されがちで、動向も掴みにくいと考えていましたが、Tealiumによって、B2B企業でもアノニマスの再来訪を促すことができ、実際に多くの再来訪を得られたのは驚きでした。このときは、アノニマスの状態から月に2,000以上の会員IDが確認でき、行動を可視化できるユーザーが大幅に増えました。これによって、再来訪者をコンバージョンさせるためのページ構成や仕掛けを考えることができるようになり、戦略的な広告配信を行うことができます。今後は、タグマネージャーのTealium iQを使って、DMP(Data Management Platform)や リターゲティングを効果的に使ったり、Pop-upツールと連動してタイムリーなフォローアップに役立てることも考えています。」

また、Tealium iQとAudienceStreamで、PCとモバイルで分断されていた訪問者データを統合し、バッジや属性などが付与された訪問者に対して、段階的に施策を考えることも可能となっているという。イベント来場予定者の関心がどこにあるかを把握できたことも、大きな効果となった。

営業の手間を大幅に削減して商談化率を3割以上向上

これまで限界を感じていたメールマーケティングに対しても、Tealiumによって大きな変革を行うことが可能になりました。これまでは、MAツールを使って、キャンペーンのモデルに沿ってナーチャリングを行い、メールを出すようにしていたが、Customer Data Hubでは、前述のようにアノニマスの状態からバッジや属性を付与して、リアルタイムの行動をベースにナーチャリングを行うことができ、顕在化後のMAによるナーチャリングだけなく、リードタイムを短縮してアプローチすることが可能となる。「アノニマス時のデータも付加されることで、確度の高いお客様をより見出しやすくなると考えています。ナーチャリング後は、インサイドセールスがリード(MQL:Marketing Qualified Lead)を営業に渡し、営業は確実性の高いお客様を訪問して商談につなげることができます。営業が商談できるお客様を見つけるためには、足しげく通う必要がありますが、Tealiumを活用した施策では、訪問時にすでに確度の高いお客様へ訪問でき、リードタイムを短縮できるようになりました。MAだけの場合と比べて、商談化率が大幅に向上した施策も出てきています。たとえ商談に失敗したとしても、すぐに次のお客様に向き合うことができるので、営業の手間やコストは削減されています」と東海林氏は話す。

IMC本部では、経営戦略に沿ってブランドイメージを作り、マインドシェアを形成、NECと仕事がしたいと思ってもらう『End to Endのマーケティング』を推進している。そのためにも今回のデジタル基盤の再整備を必ず成功させなければならないと東海林氏は振り返る。「Customer Data Hubで、MAより前に行動や関心といった情報が可視化され、AudienceStreamでWebサイトのリアルタイム顧客データがMAと連携できることで、本来の『マーケティングオートメーション』を実施できるようになりました。また、広告施策も仮説をベースに打つしかありませんでしたが、バッジや属性をベースに個別に最適な施策をリアルタイムに打つことが可能となります。より戦略的に動くことができるようになったことで、A/Bテストやコンテンツの充実、遷移率を下げているボトルネックの解消などに注力することができ、wisdomの質を上げていくことにもつながると考えています。」

マーケティングの精度や効果をさらに高めるために自社のAIを活用へ

今後、IMC本部では、Customer Data Hubの活用をさらに進め、デジタルマーケティングを加速化させようと考えている。

「Tealiumは、インプリメントの段階から私どもの目的を十分に理解して綿密なディスカッションを行い、プロジェクトを効果的に推進してくれました。Tealium本社のエンジニアチームとも現在ディスカッションしている最中ですが、Tealiumがハブとなって、さまざまなデータが扱いやすくなったエコシステムの中に当社のAIを組み込むことを検討しています。現在、バッジの付与や、MAのスコアリングは人が行っていますが、それらにAIを活用して、より精度を上げ、高い効果につなげていきたいですね。」と東海林氏は展望を話す。

また、ROIについて東海林氏は次のように話す。

「広告施策においても、ROIを明確にすることが求められています。Tealiumによって施策の効果を定量的に示し、施策の精度向上、結果へのコミットやマーケティング予算獲得などにつなげられるようになることを期待しています。当社は、自社で活用してよいと実感したモノはお客様にもお勧めするようにしているので、デジタルマーケティング領域でも、Tealiumと他のテクノロジーを組み合わせて実証し、お客様に提案していくことも考えています。Tealiumとは、目先の目標だけでなく、これまでと同じように数年後の目標を共有できるような関係を続けていけると考えています。」

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